【重要だけど忘れがち】データ分析者のための「対象ユーザーの考え方」

Voicyでデータアナリストをしているたからっちです。

今回は、データ分析者の方に役立ちそうな「対象ユーザーの考え方」について、書いていこうと思います。

基本的なことですがとても重要な内容なので、施策検討のサポートや施策の評価を行ったりするデータ分析者の方はぜひ読んでみてください。

「対象ユーザー」について思いを馳せる

アプリの運営企業で働いていると、様々な施策を実施し、データの振り返りを行い、次の施策に活かしていくというようなサイクルは、日々行っていると思います。

「こういう施策がいいのでは?」

「施策結果どうだった?」

「よし、今度はこの施策をやろう!」

データを元にした意思決定が行われていい感じに進んでいるように思えるものの、対象ユーザーについての認識が疎かだったり誤っていたりしていることが、実はあります。

今回はよくある事例と、どうすべきだったかの対応方法について説明していきます。

「対象ユーザー」を意識すべきタイミング3選

今回紹介するタイミングは以下の3つです。

  1. ユーザーの傾向分析
  2. 施策実施
  3. ABテスト
1.ユーザーの傾向分析

1つ目は、ユーザーの傾向分析です。

施策を行う前に、仮説を立てるためのユーザーの傾向分析を行うことはよくあるかと思います。

例えば、ユーザーの継続率が低いという課題があり、施策によってもっと継続率を上げたいといった目的がある際に、どういったユーザーの継続率が高いのかの傾向を分析するなどが考えられます。

その際に「対象ユーザー」について何も考えずに分析を行ってしまうと、誤った判断をしてしまう可能性があります。

よくあるのが、継続しているユーザーだけにフォーカスを当ててしまうことです。

【事例】

継続しているユーザーを抽出して、どういうアクションをしているユーザーが多いのかを分析した結果、Aアクションをしているユーザーが多かった。だから、継続率を上げるにはAアクションをさせればいい。といったような内容などです。

一見するとそんなにおかしくないのですが、次の文を見てみるとどうでしょうか?

継続しなかったユーザーも抽出して、どういうアクションをしているユーザーが多いのかを分析した結果、こちらもAアクションをしているユーザーが多かった。

要は、Aアクションは継続しているユーザーだけが特に行うアクションではなく、継続しなかったユーザーも含めて誰でも行いやすいようなアクションだったということです。

では、どうすればいいのか?

【対処法】

継続に影響しそうなアクションを洗い出し、そのアクションをしたユーザーごとの継続率を集計することで対処できます。

A、B、Cそれぞれのアクションをしたユーザーごとの継続率を比較した結果、Bアクションをしたユーザーの継続率が高かった。だから、Bアクションをさせれば継続率が上がるかもしれない!といった解釈になります。

2.施策実施

2つ目は、施策実施です。

継続に効きそうなアクションがわかったことで、そのアクションを促すような施策を実施します。

その際に「対象ユーザー」について何も考えずに施策を行ってしまうと、ほとんど効果が見られないことがあります。

よくあるのが、対象ユーザー数の規模感を考慮せずに施策を行ってしまうことです。

【事例】

Bアクションを促せば継続率が上がるかもしれないということで、施策を行いました。ただし、全然継続率が上がりません。

なぜだろうと思って調査した結果、そもそもBアクションを行うにはある一定の条件を満たしているユーザーである必要があり、そういったユーザーにしかBアクションの訴求ができておらず、全体の中で見た時にごく少数のユーザー群になっていて全体への効果がほとんど見えなくなっていた。

では、どうすればいいのか?

【対処法】

とてもシンプルなのですが、そもそも施策の影響を受けるユーザーは、全体の中でどれくらいいるのかを確認しておくということで対処できます。

仮にBアクションを行うと継続率が5%上がるとしても、そもそも施策の影響を受けるユーザーが全体の10%しかいなかった場合、5%×10%で0.5%程度の効果しか見込めません。

その場合は、行っても2%しか継続率が上がらないものの、80%のユーザーがターゲットになるCアクションなど、別アクションを訴求するような施策の方が効果的な可能性も考慮しましょう。

3.ABテスト

3つ目は、ABテストです。

継続に効きそうなアクションがわかってABテストを実施。アクションを訴求するグループと特に何も訴求しないグループ。そして、ABテストの評価を実施します。

その際に「対象ユーザー」について何も考えずにABテストを行ってしまうと、適切なテストが行えないことがあります。

よくあるのが、施策の対象ではないユーザーも含めてテストを行ってしまうことです。

【事例】

Cアクションを促せば継続率が上がる可能性が分かり、Cアクションを促すためにプッシュ通知を送るor送らないのABテストを実施。

送るグループと送らないグループでCアクションの行動率や継続率を比較したが、結果に思ったほど差が出ていない。

なぜだろうと思って調査した結果、そもそもプッシュ通知を拒否しているユーザーが一定数いたため、本来期待していたほどの効果が見られなかったことがわかりました。

では、どうすればいいのか?

【対処法】

施策の影響を受けるユーザーに絞った上でABに分割し、ABテストを実施することです。

今回の場合だと、まずプッシュ通知を送れるユーザーに絞った上でABに分割。その上で、プッシュ通知を送るグループと送らないグループで結果を比較して評価を行うなどが考えられます。

一応、AB分割をランダムに行っていれば、片方のグループのみにプッシュ通知を拒否しているユーザーが多くいるということは起こりにくいのですが、プッシュ通知の影響を受けるユーザーが少なくなる分効果が現れにくいという可能性が高まります。

終わりに

以上、「対象ユーザー」を意識すべきタイミングとその対処法の紹介でした。

一見すると当たり前のことですが、なかなか1つ1つの分析に時間をかけていられないという時に、ふと「対象ユーザー」のことを忘れてしまうことがあると思うので、ぜひこのあたりを常に意識できるようになるとよりより分析が行えると思います。